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吾子の成長記(ako042.html)

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2002/1/23(水) →題名目次
災害は忘れた頃にやってくる -- 野獣復活 生後838日(2歳3カ月15日)

 今朝は、妻、私、子の順に目覚める。
  「パパー!」
と登場。TVの前から仰向けになったままバイバイで子に見送られながら出勤しそうになったが、妻が抱いて玄関まで見送ってくれた。こうじゃなくっちゃ。
 帰宅。子はTVの方を向いたままで、私の帰宅を歯牙にもかけていない。
 またも、Aっくんに咬まれたのだそうだ。右手首の内側、動脈の辺りに赤い傷跡(3mm ほど)があり、出血したらしい。子が、Aくんのおもちゃを取ろうとして咬まれたのだそうだ。昨日病院で疲労した遠慮はなんだったのだ。うちでの傍若無人な振る舞いは、保育園でも現れているのか。それとも、Aっくんがお気に入りだから狎れすぎているのか。現に、クラスメイトで名を呼ぶのは「Aっくん」だけ。そして、吾子は、傷跡を指さしながら、
  「Aっくん、Aっくん....」
と言うが、決して非難がましいものではない。Aっくんをかばって「Aっくん、叱られてないかなあ・・・・」と言っているかのようだ。
 保育園は、先方の親に伝え、その親は私の妻とすれ違ったが、詫びのひとつも言わなかったそうだ。子供に罪はない。

 お絵かきボード付属の、磁石の取っ手の部分を鼻の穴に挿してそれをアピール。ちょうど鼻の穴にはまる大きさだ。
 フェルトペンで絵を描いていたかと思うと、突如、傘のことを思い出したらしい、
  「あべー」
と言って寝室に私を誘う。
  「ちゃんとペンにふたをしてからね」
と言っても、聞く耳持たずに泣きわめいている。私も引かない。
  「ペン、ないないしたら傘持ってきてあげる」
交換条件を提示するが、子も頑固だ。ペンを手渡そうにも手で払う。何度かそのやりとりをして、ついに子は根負けして、ペンのふたを閉めた。よろしい、約束通り傘を与えよう。
 子のマイブームは、オリーブ毛布をチャドルのように、あるいはターバンとして頭に巻くこと。
  「みみー!」
と言って、毛布を指さして泣きわめくから何かと思ったら、頭に毛布を巻くと、耳を隠す形になるからだ。こうしてささいなことで不機嫌なのは、風邪の影響もあるのかもしれないが、空腹なのである。風邪の方だが、悪くはなさそうだ。
 続いて、
  「はねー!」
と言って泣きわめく。なんだかわからん。子の自由に任せると、私の札入れをひっぱりだした。つい少し前、私の小銭入れを見つけだして硬貨をばらまいていたが、今度は、まず、カード類、続いて紙幣を抜き出した。「はね」。もしかして「カネ」か?
 Blue's Clues のビデオで、「Jump! Jump! Jump!」って言っているのを見て、子もジャンプを始め、座っている私の手を取って、
  「あっち!」
というのは、「立っち」して手を持ってジャンプの手伝いをせよ、ということであった。
 シマジロー絵本の付録のアヒルの手人形(がーこさん)を指して、
  「ひよぱ」
というのは「ひよこ」のことらしい。
 寝る時間が近づく。妻が、スポイトに入れた薬を持ってくる。子は、ひれ伏して顔を隠していた。が、身を起こしたかと思うと、スポイトを妻から取り上げ、自分で中身を吸い尽くしてしまった。よくわかっていらっしゃる。
 お絵かきボードの四辺の縁に沿って四角く枠取りをして、大きな楕円を横倒しに一つ真ん中に、左右に中くらいの楕円を縦にその左右に、上に小さな円を2つ描いた。私には「ああ、○を描いているな」としか見えなかったが、妻が言った、
  「アンパンマンの顔だ」
顔が丸くないのを除くと、なるほどアンパンマンの絵だ。真ん中の楕円が鼻、左右のが頬、上のが目玉だったのだ。
 いろいろあった一日だからか、子は、すぅーっと寝てしまったようだ。お休み。Aっくんを許してやりなさい。寛仁大度な子になりなよー。

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2002/1/22(火) →題名目次
振り向きもせず 生後837日(2歳3カ月14日)

 私が夕方の仕事から帰ると、風呂から出た子がTVに向かっていて、振り向きもせず迎えて(?)くれた。
 お風呂のパックンブロックを持ち出して並べてある。なんでも、風呂から出たがらず、無理矢理出すにはブロックを持ち出させるしかなかったそうだ。
 妻は、ベビーベッド脇に掛けておいた傘を見つけることが出来ず、保育園に置いてあるものだと思っていたので、子が、「あべー」だの「かさー」だの言って求めたときに要求を満たしてやれず、少し立場が弱まっていたせいなのではないかと思う。
 保育園の階段から降りるとき、保母さんの監視がおろそかになっていたのをいいことに、ジャンプ、ジャンプで下りてきていたそうだ。
 子が、時折、絵を描くように要求する、「ひま」あるいは「ひめ」の謎が解けたそうだ。正解は、「シマジロー」だそうで、妻に届いた大判のダイレクトメールを見て、
  「ひめー」
と突進して言ったことで知れたそうだ。シマジロー絵本と同じくらいの封筒だったそうだ。
 スポイトの飲み薬は、昨晩飲ませたときは嫌がったが、今日は、そのスポイトを私の口に当て、急だったもので一滴飲まされて、苦っ!と思っていたら、子が自らの口に当てて飲んでしまった。私にお毒味役を仰せつけたらしい。
 鼻水も出ないから、当初予定していた、鼻水吸引は見合わせる。これじゃ粉しか出そうもない。昨日も嫌がった、咳止めのためののど飴(水飴)。咳をするから嘔吐するので、嘔吐予防のために必須。今日も嫌がる子を二人掛かりで押さえつけ、口腔内に塗りたくる。これで大丈夫、と思っていたら、またもゲロを吐いてしまった。嘔吐防止ののど飴が嘔吐を誘発する。これじゃ本末転倒だ。ただ、今回は、つい先ほど食べたばかりのイチゴ約2つ分のゲロでトレーナーを汚しただけですんだが。
 薬のおかげか、わりとおとなしく寝付きました。このまま風邪、治ってほしいよ。

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2002/1/22(火) →題名目次
ねんねー! 生後837日(2歳3カ月14日)

 子の眠りに引き込まれて寝てしまった妻が2時間ほど寝てから起き出してしばらく経った深夜1時前、子が、
  「にゅーにゅー!」
と泣いて牛乳を要求する。私が「授乳」に参上すると、指を突きだして、
  「ママー!」
と台所方面を指さす。やはり、寝室のお供は妻でなくてはならないようだ。妻が寝室に入ってしばらくして、またもゲロを吐いてしまった。心配したとおり、体調が思わしくないようだ。今回の被害は甚大で、何よりも子のオリーブ毛布が吐瀉物にまみれてしまったのが問題だ。
 掃除のために子を居間に非難させると、おめめぱっちり。
  「わんわんー!」
とビデオを指さす。はいはい、わがままを聞いてあげましょう。・・・・やっと寝室の準備が整ったようで、ビデオに執着する吾子を寝室に連れ込む。
 しかし、懸念したとおり、一筋縄ではいかない。1時間ほど断続的に、
  「ねんねー!」
といって激しい泣き声を挙げる。そう。オリーブ毛布を要求しているのだ。「ねんねー」。子が、オリーブ毛布の名称を口にするのを初めて聞いたが、「寝るときの必須のお供」という認識だったのだ。

 窓下から工事の音。プールの工事が行われているのだ。すると、朝もずいぶん遅い時間のはず。妻は起きられたのだろうか。やがて、妻が私に呼びかける。父子の朝の準備が整ったと言って(奇跡?)。子は、寝たいだけ寝かせよう、などと言っているところに、這って子が登場。
  「パパー!」
おお!機嫌がいい。体調も悪くなさそうだ。妻は自分の遅刻をものともせず、子に食事を与え、出かけていった。あえて時間差を作り、子を連れて病院に。昨日と異なり、晴れ渡っている。TVに傘が出てきたことで、自分も傘を所有していることを思い出したらしく、傘を探しに寝室へ入り、持ち出した。はいはい、晴れているけれど傘を持ってでましょうね。
 病院の待合室。比較的おとなしい。先客は二組。一組は我々と同じ父子。その子が、乗り物の絵本をテーブルに戻すと、すかさず子が取りに行った。どうやら狙っていたらしいが、もの欲しさをおくびにも出さなかった。偉いぞ。その子が呼び出されて診察室にはいると、その父子の背中の所に置いてあった自動車のおもちゃ3組を取ってきた。これも狙っていて、二人がいなくなるまで雌伏していたのだ。
 診察室に入る。手慣れたもので、
  「おなか出して」
とおっしゃると腹をめくろうとし、
  「はい、今度は背中」
と言う前に後ろを向こうとし、
  「はい、あーんして」
と言うときには前に向き直ろうと体を翻していて、私の所作が追いつかないほど段取りが分かっていた。
 診察は、「風邪の引き始め」。保育園にやってよいものか質問すると、吾子のような活発な子は、家でストレスを溜めるより、元気に遊ばせた方がよい、という明確なお答え。遅ればせながら登園した。
 むろん傘とともに坂を上がる。先日のおじいさんがいないのを確認して、バックで坂道を登る。2階までの階段は、てすりにも掴まらず、半段ずつではなく一段ずつ力強く登って行き、託児室に入ると、私を見ずに手だけ振ってバイバイ。先生に、
  「ちゃんとパパの方を向いて!」
とたしなめられてやっと私の方を見つめてバイバイしてくれたのだった。

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2002/1/21(月) →題名目次
架空の何か 生後836日(2歳3カ月13日)

 小学生が保育園でお手伝いをするという内容の番組を、意外にも子は食い入るように見ている。そして、番組に反応しているのだ。やっぱ、「同世代」の活躍は気になるのだなあ。

 急に、
  「いっぽん!」 
といって床から何かを拾い上げるそぶりをして、私に渡そうとする。「架空の何か」を拾った(という設定)らしい。それに反応して、その「架空の何か」を、子とやりとりする。私が手のひらにその「架空の何か」を乗せたとき、ぱしっ!と子がはたき落として、きゃらきゃら笑う。
 事情を知らない妻が顔を出したので、子にはたき落とされる前に、その「架空の何か」を妻に渡すと、さすが母親、説明もないのに設定に乗っかって、
  「ぱくっ!・・・・もぐもぐ」
と、それを食べてしまった。子も、母をまねて、新たなその「架空の何か」を拾って食べたり、私の口に抛り込んだりした。子が食べるしぐさはまさに迫真の演技であった。

 お絵かきボードにいろいろ描かされていた。
  「しぇしぇ!」
という要求が出た。「しぇしぇ」?・・・・わからない。子がだんだんいらだってくる。
  「しぇしぇー!!!」
と地団駄を踏む。そういえば、保育園からの連絡帳に、最近オニの面づくりに取り組んでいて、吾子がすごく楽しみにしている。製作の準備をしている周囲をぐるぐる待ちかねたように歩き回るので、
  「吾子ちゃん、もうすぐ『いいこと』してあげるからね」
というとうれしそうにする、ということだ。そこで、オニの絵を描いてみる。・・・・描いているあいだ、静かに見つめているところを見ると、どうも近いようだが違うようだ。また、
  「しぇしぇ!」
という。もしや・・・・女性の絵を描いてみた。
  「しぇしぇ(先生)いたー!」

 傘で遊びたくなったらしい。
  「あめ!」
といいながら玄関に私を導く。・・・・あれ?傘がない。現在入浴中の妻が、別の所に置いたようだ。見回すと、ベビーベッドに掛けてある。子を寝室に導いて、
  「ほら、ここにあるよ」
といったが、目に入らない様子。子の頭の中には、開いたままの傘の映像があるらしく、たたんだ傘は別物に見えるのだろう。
 子は、きょろきょろと見回す。見つけられないからヒスを起こすかと思ったが、私の顔を見て、私がウソやごまかしをしていないのを信じているのだろう、再び探し始める。
 やがて、あてずっぽで、ベビーベッドの中を指さして、
  「あめ!」
はずれです。見えないところに置いてあると判断したらしい。子を、傘の見えるところに連れてきて、
  「ほら、あるでしょあるでしょ?」
まだ見つからない。子の角度を変えて見せる。三角測量なら、とっくに1点を指摘できるはず。
 やっと見つかった。子は、傘をひろげて、くるくる回す。そして今度は自分がくるくる回る。ひっくり返るまで。
 雨を家に見立てて私を招き入れる。
  「あか!」
といって「屋根」を指さす。そうなんです。赤い傘です。色もわかりますね。

 今日は、ちょっと体が熱い気がしたので、お風呂はお休み。明日は入ろうね。じゃ、おやすみー。

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2002/1/21(月) →題名目次
カサ! 生後836日(2歳3カ月13日)

 本来ならいつもより20分始業が遅くなることになっていたが、昨日の事情で、7時に代々木に行かなければならぬ。車は地下駐車場に収めてつつがなし。わざわざ持って出た傘を車に閉め込んだことに品川で気付いた。
 高田馬場から横浜まで、通しで切符を買えば、\620だが、高田馬場から品川、品川から横浜と分けて買えば、\190 + \280 = \470なのだ。そのために回数券を分けて買って使っている。
 今日は、代々木から品川まで切符を買い(\160)、横浜で精算機に通すと、\380が表示された。合計\540
 帰路は、横浜から品川まで\280の回数券で乗り、代々木で精算機に通すと、\160が表示された。合計\440。・・・・もう何が何だか。
 図らずも横浜から「湘南新宿ライナー」に乗り、渋谷で乗り換えた。すごい速いなあ。3分前に出た東海道線は立っている人さえ密集している状態だったが、「湘南新宿ライナー」は全員座れる程度だった。
 うー、渋谷の乗り換えは280m先。こりゃまいった。やっと代々木の駐車場にたどりついて、エンジンをかけると・・・・かからない。バッテリがあがっているわけではなさそうだ。元気良くモーターが回っている。寒いからでもなかろう。うちの駐車場の方が寒かろうし、だいたい今朝は一発でかかったのだ。そもそも、一発でかからないことの方が珍しい。なんとかエンジンが回り、その後、不調はなかった。よそに置き去りにされて寂しかったのかな。
 うちに向かうと雷雨が風を伴って横殴りに降る。妻が、子のために、カッパと傘を買ってきた。カッパを抱えて、遅れ気味に車で迎えに行く。
 保母さんに呼ばれて小走りでまっすぐ走ってきて、めざとくカッパを見つけて、着たがる。もうカッパしか目に入らないようで、上着を着せることができなかった。片手で子を抱き上げ、片手で傘をさして、車に急ぐ。おもーい!
 うちの玄関をくぐると、これも目ざとくドアの横に立てかけてあったキティちゃんの傘に気付いた。傘のデビューは室内となった。傘をさして、
  「はさー、はさー」
とそれは何度も何度も繰り返してさしている。開閉のしかたもおおむね覚えたようだ。妻によれば、先日まで傘のことを「あべー」(雨)と言っていたそうだが、今日は傘を見るなり、「はさー」である。今朝、他の子が傘を持っているのをうらやましそうにして、妻の傘をいじっていたから買ってきてやったのだそうだ。早く表で傘をデビューさせてあげようね。

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2002/1/20(日) →題名目次
パパ、おいで 生後835日(2歳3カ月12日)

 日曜であるにもかかわらず、意識が眠りから頭をもたげたときには、妻は起きていた。やがて子のうめき声。妻が、
  「パパはお仕事だけど、まだうちにいるわよ」
というと、這いながら寝室から子が現れ、
  「パーパ!」
と言いながら正座している私の膝の上に乗って、キューと抱きしめてくれた。子がビデオを見ている間に出勤準備をして、妻子に熱く見送られながら出勤した。
 今日の拘束時間は午後3時〜4時と午後7時から8時という変則だが、準備のため、10時半には職場入りした。結局、3時まで準備に費やすことになり、拘束が解けたのはすでに4時半を過ぎていた。
 当初、3時間の空きがあるから一時帰宅するつもりだったが、それが2時間半を切った。帰宅を見合わせようかとも思ったが、子の顔を見たいあまりに、渋滞の新宿西口を抜けて(ちょっと寄り道もして)滞在時間30分だけの帰宅を敢行した。
 いきなりドアを開けて現れた私を見て、子は、
  「パパ!」
と言いながら、妻の後ろに隠れている。びっくりしたのだなあ。うがいをしていると寄ってきて、私のももをひっかいた。
 節分が近いのでお面を買って貰っていた。ただし、オニの面ではなくて、キティちゃんとミニーのお面。本人は阿弥陀に被るだけで、むしろ私に着けさせる。ところで、お面は付録で、本体は豆である。でも、子は食わないらしい。だから私がぽりぽり食っていると、
  「吾子のっ!」
と言って、私が自分で食べようとつまんだ豆を、子の口に入れるように要求してきた。ひとつめは口に入れてすぐに出したが、今度は自分でつまんで、私の口に運び込むふりをして、自分の口に入れて、ぽりぽり食べ出した。そのフェイントを数回繰り返してから、やっと私にくれた。もっともらっていいか許可をいただいてから、数個同時に口に入れると、子もまねをして一度に数個口に運ぶ。咀嚼しながら私を仰向かせて、お腹の上にまたがったかと思うと、デロデロデローと、ペースト状になった豆を私の腹にぶちまけた。つい少し前に、ヤクルトをぶちまけられた腹である。

 さて、30分だけうちにいて、再び車で新宿西口を抜けて出勤。渋滞もなく、10分程度で職場に到着。本来、車は地下駐車場に入れるのだが、現在は私しか車で出勤していないので、ターンテーブルの上に停めてよい、と言われていた。そこに停めて、すぐに車から降りずに本を開いたのがいけなかった。
 本を閉じて車から降りて、いつものようにドアのロックを内側でしてからドアの取っ手を引いたまま施錠をする。鍵穴がつぶれかけていて、キーを回すのが困難だからだ。そこで、ふと、先ほどの本を持ち出した方がよいと思ったのは、虫の知らせの一種だったのかもしれない。
 キーがない!
むろん、キーがなければ車に乗ってこられるはずはない。見ると、ハンドルの脇に、電ボ(おじゃる丸のキャラクタ)のキーホルダーが。
 パニックになった私は、まず妻に電話する。妻曰く、JAF に電話せよ、と。JAF の電話番号を調べてくれた。
 JAF。私は会員のはずである。しかし、自信はない。というのは、約1年前、近所のガソリンスタンドが、
  「うちで車検をすると、1年間無料で JAF の会員に!」
というキャンペーンをしていたので、車検をそこに頼んだのだが、JAF の申込書を書いたこともないし、会員証が送られてきたこともない。数ヶ月前、そこのガソリンスタンドの店長に、その旨伝えたところ、調べておきますと言ってそのままになっていた。案の定、
  「そのお電話番号、お名前、ご住所のいずれでも登録されておりません。非会員の方は料金がかかりますが・・・・」
・・・・9,700円だそうだ。
 その数字を聞いて、ようやく平静になった。おそらく、多少のショックでは人間はパニックになるが、度を超えると、火事場の馬鹿力ならぬ火事場の馬鹿脳力が働くのであろう。問題は、ターンテーブルの上にあるから明日車を駐車場に入れる人の迷惑になるというに過ぎない。他の人の出勤前にどかせばいいだけの話である。明日は横浜の現場。朝イチで車を引き取ればぎりぎり間に合う。
 というわけで、管理職の許可を取り、
  「早朝出勤 - 車の引き取り - 一時帰宅 - 横浜へ」
ということにした。しかし、電車で帰る途中で、
  「早朝出勤 - 車を地下駐車場に押し込む - 横浜へ - 退勤後車を引き取る」
でいいのでは、と気付いた。明日の仕事は午前で終わりなのである。

 へこんで帰宅すると、今度は人見知りせずに私を迎え、
  「パパ、おいで!」
と手を引いて布団に連れて行った。「おいで」というセリフは、今日、一日妻が教え込んだそうだ。教育の効果あり。
 用意された季節はずれの西瓜を口の前に差し出しても、首を左右にして全然食べない。
  「あーおいしいな、おいしいな」
と、わざとらしく食べてもダメ。しかし、
  「これは吾子の西瓜だよ。パパがもらってもいいかな? あー、おいしそう」
と言うと、口をあーんと開けて、連続で数切れ食べた。所有の意識は、やはり強いようだ。

 私のトランクスの足の方から手を突っ込んでくる。きゃー、やめてー。

 片方の足に、靴下を履かせといて、もう片方は自分で履こうとする。ただし、もうすでに履いている上に重ねて履こうとするので、
  「反対の足に履かなきゃ」
というと、両方の足を同時に突っ込もうとする。
  「靴下広がっちゃうよ」
というと、やっとちゃんと履いた。ところが、妻によると、履いている方の足で靴下を広げ、もう片方の足で履きやすくするための子の発明らしい。これには驚きました。

 寝る時間。全然チューをしてくれない。逃げ回って顔を背けて。もう今日は諦めよう、と思っているところに、
  「むーん」
と言って唇を突き出してやってくる。じらしのテクニック、最高だぜ。

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2002/1/19(土) →題名目次
メガネ泥棒 生後834日(2歳3カ月11日)

 一度、
  「マーマ!」
と陽気な呼びかけが寝室から聞こえて、静かになった。ん?夜はもう明けたようだ。
 しばらくして、今度は悲惨な声で、
  「マーマ! マーマ! マーマ!」
と叫んで泣き止まない。どうも良くない夢を見たようだ。夫婦ともその泣き声で布団を出るはめになったが、もうだいぶいい時間だったから、音の大きすぎる目覚ましになったわけだ。
 たぶん、空腹だったことも原因だろう。昨日から置いてある麦チョコをつまんで食べ始めた。私が、
  「おいしそうですな・・・・」
とひとりごとを言うと、子は、ひと粒つまんで私の口に入れてくれた。気前のいいこと。
 その一方で、メモを取る必要ができて、子のペン(もとはといえば妻のペン)を使おうと思って、子専用のペンケースを開こうとしたら、顔をくしゃっとゆがめて泣きそうになる。いったん子に渡して、顔が落ち着いたところで、
  「パパに貸してくれるかな?」
というと、うなづいてくれたので、ケースを受け取る。顔色は変わらない。安心してケースを開いてペンを出そうとしたら、またも顔をくしゃっとゆがめて泣きそうになった。
 妻が子を呼んだときに、ふすまがちょうど顔がはさまるだけ開いていたところに、立ったまま顔だけ突っ込んで返事をしないでいる。いないいないの一種である。
 なんだか風呂のあがりがまちに腰掛けて、私を呼んで、隣に座るよう指さす。並んで座るにはぎりぎりの幅だ。私が狭そうに尻を置こうとすると、子は、座ったまま腰をずらして場所を空けてくれた。ありがとさん。
 引き出しを開けて、パスケースを見つけて、ズボンのお腹の前のあたりのゴムにはさむ。ずれて股下に入ると怒っている。品が悪いからやめてくれ。
 同じく、引き出しからおしぼりを発見。封を切らせて、それで私の脛をていねいに拭いてくれる。次に顔(!)。それから足の裏を拭いてくれた。それで終わりかと思ったら、オイルヒーターの送風口の前におしぼりをかざして温めている。そのおしぼりで耳を拭いてくれた。足の裏を拭いてくれたばかりだが、もう、どうでもいいや。右耳を拭き終えたら、姿勢を変えさせて、左耳まで配慮が行き届いていた。
 今日も、保育園に連れ出すときには、自主的にTVを消すまで待った。保育園に向かう坂道を、例によってバックで登っている子を少し先攻して私もバックで歩いていると、道沿いの家からおじいさんが見ていて、かわいらしさにほほえましく笑った。すると、吾子は、前向きになって、ダッシュで私のところまで走ってきておじいさんが視界から見えなくなって、再びバックで歩き始めた。
 その後、私がバックで走り始めると、子は、それを追おうとするが、バックでは追いつかないので普通に小走りで笑いながら追ってくる。おかげで、後半は、スピードアップになった。
 今日は2階まで連れて行く。途中、園児たちの絵が壁に貼ってある。
  「吾子の絵どれ?」
とたずねると、端っこの絵を指さす。本当に吾子のものだった。保育園児の絵である。どれも抽象的に○やら線やらがランダムに書かれているようにしか見えない中で、自分の作品はわかるのであった。
 保育園から帰ってきた子は、母にお菓子をねだっていた。
  「てって」
と言って袋を持ってくる。「開けて」という意味らしい。
 風呂はおとといと同じ。入る前に泣くしシャンプーはいやがるし入浴の延長を求めたしだ。
 妻が風呂に入っている間、子の誘導に従って寝室へ。おでこに貼る冷却シートのシールを剥がしたが、おでこに貼ろうとせずに、折り畳んで部屋の端へ放置してしまった。
  (もったいないから)こっち持ってきなさい!」
と言っても、「いたんだかにゃぬにゃぬ」とか言って首を左右に振って持ってこようとしない。執拗に要請しても執拗に断る。続いて、私のメガネを、
  「ないないー」
と言って、隣室へ持ち去ってしまった。
  「メガネ返してー」
と言っても、無視。メガネ泥棒め。
 子は、食卓椅子に乗って、オリーブ毛布で顔を隠して、
  「吾子、いないなぁー」
とひとりいないいないをして、
  「いたー」
と言って毛布を外す。
  「いたけど、パパは見えましぇん」
と言うと、「うん」と頷いて隣室に行ったかと思うと、メガネを持ってきてくれた。何気ないことばを聞き取って、その意味するところを裏まで理解していることが、今朝の麦チョコと重ね合わせて証明された。でも、結局、冷却シートは寝るまで持ってきてくれなかった。それでパパが不興の面もちであるのを感じてはいたのだろう、眠さもあって、寝る直前は不安定であった。

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2002/1/18(金) →題名目次
もったいぶる吾子 生後833日(2歳3カ月10日)

 吾子が起きたときに私が在宅だと、子の寝起きがいいと妻は言う。そうだとすればうれしいことこのうえない。
 今朝はTVでなくビデオを選んだ。例の、Blue' Clues という題名のビデオで、イヌの Blue が主人公らしいが、なにせ英語の字幕無しなので、よくわからん。人間の主人公 Steve は「魔法(?)」が使えるらしく、「トゥトゥトゥ、トゥットゥトゥー」と言いながら両手をチンパンジーのように左右にぶらぶらさせて、くるっと回すと、テレポテーション(空間移動)ができるようだ。
 その、Steve を真似て、---- 私には空間移動はできないが、戸口の向こうで横っ飛びに姿を消して見せると、前々からそう思っていたとおり、めちゃめちゃウケて、何度もお座敷がかかった。
  「あったい!」
というのは、「も一回」という意味らしい。

 妻のお出かけ後、保育園にのんびりと出発。上着を着せようとすると逃げ回って着てくれない。やっと着せたところで、TVの「おかあさんといっしょ」で、子の聞き慣れた音楽がかかる。画面に登場する子供達の振り付けを真似て踊っている。とても止めさせて保育園に行くなんて無理だ。
 その曲が終わり、
  「TVぱっちんして!」
と言ったが、またも子の聞き慣れた音楽が。これを聞き終えるまで延期だ。この音楽にも反応して、子は踊っている。
 ところが、サビの部分が終わったところで、曲半ばにして、子は、いきなりリモコンのスイッチをオフにして玄関に向かったのだった。別に保育園に行きたくないわけではなさそうで安心した。
 今日もバックで坂道を歩く。黄変した葉と紅変した葉とを道ばたから選び出して両手に1枚ずつ握って。玄関での「バイバイ」は、保母さんに言われて、私にではなく保母さんに向かってしていた。

 子が保育園から帰るのと入れ違いに、私は夜のお仕事へ。子は、TVにワニが映ったのを見て、
  「アニ!」
と指摘。いっぱい動物の名前を覚えているね。TVの前に端座している吾子に、
  「パパおでかけらだからね」
と言うと、こちらを向いて、無情にも「バイバイ」だけしている。玄関まで見送ってくれないので、しかたなくこちらから近づいてチューしようとしたら、ひれ伏して顔を隠してイヤイヤをした。でも、もったいぶっているだけで、やがて顔を起こして
  「チュー・・・・ん、ま!」
という感じの熱いベーゼを交わすのであった。

 夜のお仕事から帰ると、瞬間移動をリクエストされた。昨日のチェーンを見つけて、今日も「チェーンワーク」に励む。創作中はおとなしいものだ。依然として、ハート作りは職人なみの頑固さでみずからの手順を変えようとしない、出来なくてもいらだったりしない。その、ハート作りの最中に、
  「チューチュー!」
と言うので、見ると、ミッキーマウスの輪郭がチェーンで描かれていた。
 寝る前にちーち(トイレ)の手伝いをしたが、放尿はしなかった。寝る直前、正座した私の膝の上にそば殻枕を乗せて、その上に子が腰掛けたので、枕ごとずり落とすと、気に入ったらしく、何度も求められる。布団の上に滑り落ちて、起きあがるためにうつぶせになった吾子が、
  「あっ」
と正座した私の膝の間を指さした先に見たものは、私の○ん○であった。

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2002/1/17(木) →題名目次
人間ポンプ吾子 生後832日(2歳3カ月9日)

 妻が保育園に迎えに行くと、階段をぴょんぴょん両足を揃えて飛び降りていて、保母さんにたしなめられたそうだ。その話に触発されて、
  「ジャンプ、ジャンプ、ぴょん、ぴょん!」
と言ってジャンプしながら、両足でひざまづきました。

 風呂から呼ぶと、やはり泣きながらやって来て脱衣をするのはなぜでしょう。浴室に入ると、即座に機嫌良く遊ぶのに。今日は、ガーゼをしきりにお洗濯して、またも股はまた自分で洗っていました。
 珍しく洗髪の時に暴れまくって大変であった。私の両膝の上に仰向けに寝かせて頭を押さえてシャンプーするのだが、頭が落ち着かずずっと騒いでいた。姿勢がいやなのだろうか。
 浴槽に入ると、もはや乳首より下に水面がある。しゃがんで湯を口に含んで----たまには飲んでいるようだが、私にもしゃもじで掬って口に含ませて、ぴゅーっと噴き出す。人間ポンプ。はしたないし不潔だけれど、しゃがむことで肩まで湯に浸かるからよしとする。
 それで風呂が楽しくて、
  「そろそろ出るか?」
と言っても、首を左右に振って、
  「ううん」
と拒絶する。いまだかつて、私が浴槽から出て、「私も出してくれ」とばかりに泣き顔で両手を差し出さないことはなかったのに、今日は初めてそのフロックが効かなかった。私はのぼせそうになりました。でも、楽しかったからよしとする。
 フロックといえば、子と二人でいるときに、子が靴下を脱いでしまい、触ると冷たいので履かせようとするがどうしても履いてくれない。
  「履かないとパパあっち行くよ」
と、寝室に私を連れ込んで遊ぼうとする吾子に取引を申し出たが、最初は顔を赤くして抗議したので子の元に行って履かせようとしたのにまた拒絶したから、同じ申し出をして子にバイバイをしてみせたところ、
  「バイバイ」
と子は私が戻ってくるのを見越して手を振っていた。そもそも、私には室内で靴下を履く習慣がない。だから子が履いていなくてもよしとしよう。

   「とーととーとアンパンマン」
とこぶしを叩き重ねながら手遊びをする。その後、自分の頬を引っ張って伸ばして、
  「アンパンマン!」
と言うが、それはカレーパンマンじゃないか。また、
  「はえー」
と言って万歳に近い格好をする。食パンマン、かなあ。

 妻が子の夕食の相手をしているときに、話の流れから、
  「おりこうおりこうして」
と言う(妻が・・・・)。よせやい、照れるぜ恥ずかしいぜと思いつつなでなですると、子も頭を差し出してきたからもちろんなでなで。すると、子も、私、そして妻の頭をなでなでして、最後には自分の頭をなでなでしていた。

 お絵かきボードを消したかと思うと、ペンをふるってさらりと絵を描いてのけた。ムンクの「叫び」みたいな顔。おそらくはアンパンマンを意図した絵かと思われるが、大きな円(顔の輪郭と推定される)の中心より少し下を中心とした中くらいの円ひとつ(大きな口と思われる)、その少し上に、目と思われる2つの円。みごとである。
 10cmほどのブレスレットと思われる金の鎖(妻があっさり子に渡したところを見るとホンモノではあるまい)とその部品3つ(ひとつはガラス玉?と思われる宝石がまぶしてある)を床に並べている。鎖を一直線に置いて、それを水平線にみたてたその上下の位置に他の部品を配置しているのだが、何らかの意図を感じられる。
 それがはっきりしたのは、
  「はと、はと」
と言った時だ。見ると、鎖でハートマークを作ってあった。ハートが崩れると、
  「はと、ないなあ」
と言って作り直す。大人なら、最初にわっかの形に置いてから形を整えるだろうが、吾子は、鎖の両端を持って、偶然にハートのくぼみができるまで、根気よく置き直している。普段の気の短さが信じられないくらいだ。
 その後、ハートの上に、
  「はな」
  「め」
とつぶやきながら、他の部品を並べた。ハートを口に見立てているのだった。その後も、鎖プレイは続いた。

 寝る前は、子供っぽくヨーグルトを食べた。口の周りから鼻の下まで、一部、眉間も白いヨーグルトまみれ。スプーンで掬うよりカップの縁に口を当てて、掻き込んだ方が早いからだ。おかわりを所望していた。
 その後、ペットボトルのジュースを飲んで、自分でふたを閉めて、おやすみです。パパの横にごろんして、
  「ねーね!」
と言って自分の寝室に行こうとしなかったので、強制連行したら、わりとすぐにおやみすみなりました。

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